弓の懸架台 2016.05    
 あられ組み板の切り出しはこちら     板矧ぎ冶具はこちら     
T画伯さんから注文が来た。
Tさんは、弓道の有段者で、さらに上を目指しておられる。大事な弓の懸架台を作ってほしいとのこと。床の間の片側に置きたいが、市販のものでは寸法的にはみ出してしまうし、気に入らないとのこと。さっそく、お宅にお邪魔して収納場所を見せてもらった。
弓の道具は結構ある。弓、弓矢、練習着、手袋その他もろもろ。一見したところそれらが乱雑に置かれている。
うらさんのいつもの癖で、見た途端、「これらをまとめて収納できる引き出し式の弓の懸架台を作れば一気にすっきりするだろう」と思った。口に出したが運のつき、Tさんが喜んでしまって、ひっこみがつかなくなり、結局作ることになってしまった。
引き出しは、結構手間がかかるがこれはやる気の問題。また、この台の上には人が乗るので、踏み台としての強度が必要であるが、これは、うらさんの得意な「あられ組み工法」と「板矧ぎ」を使うことで解決できる。残る課題は、床の間という限られた空間に納めるデザインである。
<設計課題>
当然ながら、床の間の天井の高さは限られている。即ち、高さの制限がある。
また、弓を立てる傾斜は、大きくすると弓が反ってしまうので、あまり大きくはできません。また、弦を張っていない弓は結構長い。この制約の中で、弓に負担をかけることなく、収納用の引き出しをどのように作り込むことができるのかということがが大きな課題でした。
Tさんは、引き出しの深さを大きくするように主張する。引き出しの深さを大きくすれば、弓が天井にあたってしまう。かといって、弓の傾斜は大きく出来ない。色々な案を検討する中で、弦を張らない長い弓は、横に出して、床に直に置く構成を思いついた。これで、やっと、Tさんも私も納得できる構成ができました。
<結 果>
左は、Tさん宅の床の間に設置した完成の状況です。弓は、中央に弦を張ったもの、横に張らないものがかけられるようにしてあります。
また、左に、弓の矢を収納した円筒状の筒が立てかけてあります。
収納は、下段に練習着などを収納する大きい引き出し、左端に小物を納める引き出しを2段もうけてあります。
床の間がスッキリとしました!!!


引き出しを開いたところです。

下段に練習着を収納する引き出し、左側に小物を収納する引き出しが2段作ってあります。
この中に、普段のグッズはすべて収納されました。

以下に、作業状況を書き留めます。

まずは、本体の加工作りです。
材料は、いつもの1×4です。
あられ組加工法した板を、板剥ぎしてあります。
人が上に乗っても大丈夫なように、嵌め込みをするようになっています。

左側面と中央板です。
左側面に、中央板を嵌め込みます。


右側面です。
あられ組です。


左右の側板を嵌め込んで組み立てた状態です。


次に、小物入れようの中板を中央板に嵌め込みます。


最後に、天井を嵌め込みます。



本体の組み立てが出来ました。


組み立ては、各あられごとにビス止めをしました。
ボンド接着でも良いとは思いましたが、他家に出してしまうので、、長期の強度を確保するためにビス止めとしました。
弓を立てかける懸架アームと柱です。移送と、組み立てを考えて、本体に嵌め込みとしてあります。また、アームの連結板は、柱に対して回転自在として、床の間の天井高さに対して、調整可能としてあります。


懸架柱の嵌め込み部分です。
この仕掛けで、ぐらつくことはありません。

次は、収納用の引き出しです。

左が、大引出と子引き出しの部品です。
材料は、軽くするために、ファルカタ(南洋桐)集成材を使いました。
側板には、底板(5.5mmシナベニヤ)を嵌め込むための溝(6mm)が彫ってある。

各引き出しの箱の前面に、前板を張り付けて、強度と取っ手を作りこみます。
取っ手を掘り込み加工で作りたかったのですが、掘り込みに必要な工具が無いので、1×4材のキリコ方式にして、取っ手部分を作ることにしました。

左の写真で、完成した収納箱と前板です。


出来上がった、収納箱です。
掘り込んだ取っ手部分が結構イケています。



引き出しのレールと、レール溝です。

市販の DIY用の金属レールは、結構場所を要するのと引き出し幅が短いので、昔ながらの木のレールとしました。
レールは手持ちの板から剥ぎ取りしました。
レールとの滑り具合を滑らかにするため、結構苦労しました。




完成です!!!!



収納引き出しを引き出したところです。
なかなかのもんです。




仕上げについては、Tさんから「床の間に置くので黒系統にしたい」との要望があった。

そこで、以前に「玄関の収納BOX」に使った、(有)シマモトの「上柿渋」の上に「上柿渋色人」を使って思い切り黒っぽく仕上げた。

結構、味のある古代色風にに仕上がった。